もう一つの日本を実現しよう

(知り合いの方々へのメールそのまま[長文です])
いつもお世話になっております。澤田石です。金融恐慌につづく
実体実態経済の悪化は、日本崩壊から再生への千載一隅のチャンスだと
私は確信しております。人々の苦しみと痛みは増大するばかりです
が、再生する糸口が明確になりました。私はそう思います。
粗削りですが、基本的な政策について述べさせていただきます。

トルストイの金言 
 岩波文庫の『トルストイの生涯』ロマン・ロラン著) p205より
> 「人々を結合するものはすべて善であり美である
>  人々を離反させるものはすべて悪であり醜である」
>  この公式だれでも知ってます。これはわれわれの心の中に
>  書き付けられているものです

■私が自明とみなすこと
・神は人々が協業する限り、皆が豊かになれるようにこの宇宙を
創造したのである。(自分はクリスチャンではありません)
・科学と技術の発展は能力に応じて仕事をして、必要に応じて
サービスを受け取る社会の実現を可能にする。
・自由は法の支配と同義である
・法の支配(人の支配ではない)の下でのみ、政治の自由(民主主義)、
経済活動の自由、言論(出版)の自由等が可能であり、法の支配なくして
は科学と技術の発展(=生産効率の増大)は困難となる
・国家の目的は教育と社会保障の充実であり、その手段は法の支配と
 自由と民主主義の政治体制である
・国家は私人の目的に介入してはならない
・官僚体制は必要悪である
・官僚ないし知識人が社会を設計できるという考えは幻想である
・公的自由ないし公的幸福の実現が人間にとって最高の喜び

■政府・与党の景気対策は駄目
▼総じて、今困っている人々に関係ない
 ・住宅ローン減税(既にマンション等は供給過剰)
 ・証券取引の利益に対しての減税措置の延長
 ・輸出企業が海外子会社の利益を国内に送る際の減税
 ・総じて、すべての減税政策は赤字の企業にも低所得者にも
  無関係
 ・定額給付金(論外!!)
 ・減税するにあたり「財源は」という話しがまつたくないが、
  社会保障費の2200億円削減についてのみは、財源がみつから
  ないとなっている

■なすべきことは、『困った時はお互い様』の原則で非常事態に対応すること
 金融恐慌、景気後退という現実があるので、本当は必要な
企業の社会保険料負担の増額、租税特別措置の撤廃(基本的に大企業
にとってのみ有利)、法人税の強化、などは現実的選択肢になら
ない。したがって以下のごとき政策がいろいろな理由で有効と
思える

■重要な事実
1)消費税(付加価値税)が1989年に導入されてから2007年度までに消費税の
総額は188兆円、その間における法人税減税(利率低減と租税特別措置の
増殖。このような主に輸出する大企業[トヨタCanonなど]のみが利益)の
総額は160兆円。
 すなわち、消費税は社会保障というセーフティーネットの手当というよりは
企業減税のために使われてきた。
 全税収にしめる消費税は日本が24.6%、イギリス23.7%、イタリア27.5%と
日本の消費税は税率は5%であるにもかかわらず大きい(生活必需品が
ゼロ税率ないし低率でないため)

2)トヨタの奥田氏、Canonの御手洗氏らが、派遣労働者制度を創設し
非正社員が3割の日本にしてしまった。若者の車離れは、非正社員
増加による。私は1962年生まれであるが、例えば友人で工業高校
卒業の人達は卒業後、正社員になれたために、車好きの人は
150万円のスカイラインを購入していた。今は、高卒者や大卒で
「能力が低い」、「資格がない」人は正社員になりにくいため
借金して車を購入するなどできない。
 奥田氏は自らの首をしめる政策を主導してきたのである。

3)この20年余りの間、高額所得者の課税[税と社会保険料]は軽減されてきた

4)医療、介護、年金、生活保護等という社会保障の充実は国家としての
目標であるべきであるが、社会保障は目的でなく必要悪とする見方をする
政治が続いてきた。言い換えると『困った時はお互い様』、『お金が
ある人が貧乏人を助ける』という日本社会の伝統を否定する政策が
継続してきた。『こまった人は自己責任で』という社会が持続可能
であるはずないことに政治指導者はきづかなかった。

5)企業・団体献金が禁止されてなかったために、大企業の献金
自民党に集中し、悪徳商売人(無知な人々)の影響が不当に増大
した。

6)報道機関のほとんどが民間であるために、トヨタなどの大企業の
コマーシャルに依存する報道機関が「自己規制」してきた。

7)1〜6の結果として、GDPにしめる社会保障支出は先進国で
最低水準。さらに、医療費の自己負担が世界一の水準。

8)1〜6の結果として、将来に不安をかかえる市民が増大し、消費よりも
 不安にそなえての貯蓄や個人保険(医療や年金)への支出が増大。
米国系などの民間保険会社の医療・年金保険が儲かっている。

9)1〜6の結果、個人消費支出は低迷したまま。大企業の設備投資は増え
経常利益率も大企業は好転したために見掛けの経済成長率は少し
好転したが、大多数の人々の生活レベルは低下し、将来の不安は増大

10)1〜4の結果として、税金も年金保険税も医療保険税も払えない人々が
 増加し、さらに生活保護世帯も増加
 →個人所得税が減った。年金、医療保険介護保険の未払い増加
 →→中央・地方政府が困窮した世帯・個人に支出する金額増加

11)女性が結婚しようが、結婚しなかろうが、子供を産んで安心して
育てることができるための政策がほとんど皆無であった。理由は
財政危機。


■政策提言
▼個人所得の累進強化
 これは言うまでもない。直ちにしなければならない。
高額所得者からの2兆円程度の増税は必須であろう。

不労所得への課税強化: "資産"性所得に関連する課税強化

1)個人金融試算が1500兆円、その半分が預貯金
 利子課税を50%に。そもそも普通預金にしろ定期預金にしろ
利率が異常に低いので、金利に依存して生活している個人は
ほとんどいないであろう。預貯金への課税強化により生活が
困る個人はほとんどいないと思われる。少なくとも、派遣労働者
や失業者は全く困らない。750兆円の預貯金の金利を平均で0.2%
という数値(実際には定期預金は1%以上なのでもう少し高いと
思われる)で計算すると預貯金の利子は総額で1.5兆円。現在の
利子はたったの20%(利息の15%は国税、5%は地方税)。
50%にすることで、7500億円以上の増税が可能。これだけでも
社会保障費用の自然増からの2200億円削減など中止できる。

2)公債の利子についての課税も50%
 中央および地方政府は利払いで精一杯である。中央政府について
云えば国債費は30兆円を越えている。
 中央・地方政府の公債の公債は平成20年度末には約780兆円(GDP費148%)。
 日本国の公債は外国人(政府、企業)にさほど買われてない。
 国債の利払費は、二〇〇七年度は八・六兆円、二〇〇八年度は九・三兆円
財務省「債務管理リポート2008」内の一般会計利払費)。
公債の利子課税50%により、中央政府の利払いは4兆円程度減じ、
その分を社会保障や雇用対策に回せる。
 細かい数値はともかく、中央・地方政府の公債の利払いに関して
50%の課税をすることは100年に一度の非常事態ならば政治的に十分に
受け入れられることであろう。50%という高い税率が長期金利の上昇を
もたらすという経済学的な予測もあろう。ならば30%にするなどの
取り繕いが必要だろう。

3)証券等の売却益(キャピタルゲイン)課税の強化
 トリックを用いた金融バブル政策が「持続不可能」であることが
再び明確になった。そもそも1929年の大恐慌は金融機関のハイリスク
ハイリターン商品の野放し政策(米国)によるものであった。あの
大恐慌の教訓を正しく理解したローズヴェルト政権は銀行は
州を越えて営業してはならない、銀行、保険会社、証券会社は
分離せねばならないと規制を強化したのであった。そのような
規制強化がレーガン政権以前まではまもられていたために、
世界は大恐慌をまぬがれていた。銀行、保険会社、証券会社の
融合を許し、ハイリスクハイリターンの金融商品の発売を
許した米国の政策が今日の危機をもたらしたことは既に
証明された事実である。
 従って、日本政府がやろうとしている証券等取り引き利益の
減税の持続は間違った政策である。逆にキャピタルゲイン課税は強
化するべきである。

▼雇用の確保
1)医療と介護への失業者吸収政策
 どこの病院も人手不足にもかかわらず、診療報酬削減のために
苦境におちいっている。国家資格を持つ看護師や看護福祉士がレントゲン
検査の時に送り迎えしているのが現状。医師は事務員でもできる書類
作成をしている。しかい医療機関は経営危機にあるために、事務職や
単純労働者を雇用できない。
 今年度の医療・介護の診療報酬の内容を直ちに変更することは
現実的に極めて困難である。
 したがって、保険点数一点10円のところを、一点11円または12円と
するのである。医療は30兆円そこそこ、一点点数が11円になれば
三兆円以上、二点なら六兆円以上は保険医療機関の増収となる。
 保険医療機関(医療と介護の公的施設等)の収入を10%プラスと
することで、公的病院ですら多くは黒字となる。
 すべての保険医療機関に対して、失業者ないし低所得者の雇用を
現在の人員からして5%以上増やしたらば、保険点数一点について
11円ないし12点という条件をつけること。数値については専門家による
計算が必要であろう、もちろん。
 失業した派遣労働者が保険医療機関で働く場合、専門技能がないために
単純労務に就いて、低賃金になるには致し方ない。同時に、希望する者に
対しては介護ないし看護等の専門学校に行く事を国家として補助することも
必須である。

5)農林水産業の復興
 中国が高い経済成長をしているおかけで、一次産品の価格が高騰して
いることは天佑である。農林水産業を「基本的に」鎖国すること
条件がととのっている。一度に鎖国するのではなく、段階をふんだらよい。
 食料自給率を20年以内に9割とする大目標を設定し、高齢化した方々が
多い農林水産業への失業者の就労を援助する国家政策が必須であろう。
例えば、トヨタなどから解雇された労働者が医療・介護現場で働くので
はなく農林水産業に従事したい場合、農家、漁業者、林業者等の
業者に対して、一人あたり年間360万円の補助をする。補助は無期限では
なく、毎年30万円減額でもよい。
 この政策により農林水産業の生産が増大するのであるが、農協、
農水省、そして学者の叡智を絞って、増大した生産物をどのようにして
無駄にすることなく買い取るかの仕組みをつくるのである。

▼地元経済主義への転換
 全国チェーンのサービス業や小売り店は確かに効率が良く安いが、地に
足がついた産業ではない。駅前商店街がシャッター商店街となっている
現状から再起するための方策は地域再生のためになんとしても必要
1)大規模店舗法の規制強化

2)酒と煙草の販売は全国チェーンの企業には例外なく認めない
 高齢で低収入の方々、失業した若者など、社会的弱者にのみ
 専売を許す。

■まとめ
 高額所得の個人所得税強化、資産関連課税(利子、証券取り引きの利益
など)強化により、赤字国債なしで10兆円程度の増税をしなければ
ならない。
 このような増税は困っている人々には無関係。この増税により、
医療・介護・農林水産業の体力を強化し、同時に医療・介護・農林水産
業への雇用を数十万人規模で増大することは、まったく容易であろう。
 民主党などの全政党に真剣な検討を望むものである。