日本医療機能評価機構への公開メール(To info@jcqhc.or.jp)

(日本医療機能評価機構の web page = http://jcqhc.or.jp/html/index.htm)

澤田石 順と申します(平成元年に医学部卒業、医師免許取得)。
私は病院の勤務医(ただし、回復期リハビリテーション病棟専従医)です。
自分の勤務する病院には2002年2月から在職しております。貴機構の
病院機能評価 VERSION 4 の受審にかかわりました。その頃は感染対策
委員長でした。こと感染対策に関しては受審することがきっかけとなり
「人手がない、金がない、当院ではそこまでは必要ない」との理由で
やりたくてもできなかった諸感染対策が実行できるようになりました。
受審のために書類を整えたり、組織のあり方を改革したり、イントラネット
のホームページを立ちあげたり、感染対策委員会は努力しました。一定の
成果は得られたと私は判定します。(私が勤務する病院は認定されました。)

 本題に入ります。

Version 4 受審の全体的な評価

 受審することによる実質的な改善は例外的でした。基本的には書類と委員会が
増大しただけでした。私の勤務する病院では、他の病院の多くと同様に、
昨今の医療費抑制政策のために、医療専門職のマンパワーの増大はなされず、
非医療専門的な仕事を実行してくれる非医療専門職の首切りがなされ、
医療専門職の業務の絶対量が増大しました。病院機能評価 version 4 を受審し
たために間接業務が増大しました。幸いというか当然のことながら、病院機能評価
受審を契機に「実行」する「ことになっていた」諸規定の多くは、単なる空文で
して、現場の職員は読んだ事もなく、病院は新たに決ったルールを徹底する努力
を「実際にはしない」ので、間接業務増大による「被害」は減殺されてはおります。
それでも病院という組織の特性として、一度できてしまった委員会はたとえ
単なる時間の浪費であっても存続してしまい、一度通常業務として運用が
始まった書類はなかなか消滅しないため、間接業務の増加は深刻な問題に
なってます。

▼病院機能評価 Version 4 の受審がもたらしたものとは何か?
 〇患者はもちろん誰の利益にもならない書類の増加
 〇患者はもちろん誰の利益にもならない委員会の増加
 〇職員のサービス残業の増加
 〇一般職員の大多数の病院機能評価への軽蔑(やっぱり形だけとの思い)

▼病院機能評価 Version 4 の認定がもたらさなかったものとは何か?
 〇医療の質向上
 〇職員の士気向上
 〇職員の退職率低下
 〇病院の収益改善
 〇紹介患者の増加
 

Version 4 受審に関する結論

 害が利益より圧倒的に大きかった

Version 5 について

 500以上にわたる審査項目を全て読み、考えました。一言で言えば、問題外です。
カタチだけの書類を整えて、カタチだけの「やっている証拠書類」を整えて、
必要もない委員会等を新たに作ることなくして、version 5 の受審などとても
できません。1200床もあるような急性期の大病院なら規模の経済が働きますから
受審はさほど負担ではないと思います。私が勤務する病院のような非急性期の
600床程度の病院はもちろん、急性期の200床未満の病院が「合格」するとした
ら間違いなく「カタチ」だけのこととなり、有害無益だと思われます。
 従いまして、私は現在勤務している病院が version 5受審をするという
既になされている「決定」に反対する運動を4月2日から開始しました。
 一般職員の何十人にインタビューしたところ、全員が「あんなものいらない」
「やめてほしい」でした。病院のトップレベルの方々は「もう受審は決って
いるからする」または「機能評価をとることで病院のステータスが上がる」
というあまりにも情けない理由で、受審を規定路線として、一般職員に
書類等の作成を強いております。

 以上は前置。

 貴機構に公開で質問いたします。
 貴機構は社会的公共財だと私は信じますので、明白な回答を要求します。
 私は、貴機構が利益追求のみを目的とする単なる天下り団体でないと信じるため、
回答が得られるものと信じます。

日本医療機能評価機構への公開質問

Q1. 貴機構の目的の1つ医療の安全を高めることですか?

Q2. 貴機構の目的の1つは厚労省天下り先確保ですか?

Q3. 貴機構の全職員(非常勤を含めて)は何人ですか?

Q4. 貴機構の全職員(非常勤を含めて)中、厚労省に勤務した経験が
 あるのは何人ですか?

Q5. 貴機構は医療の安全のためには、医師のマンパワー増大が必要とは考えない
 のですか?

Q6. 急性期病院に関する病院機能評価の審査項目に、「医師が32時間連続勤務を
 しない」という当然のことが存在しない理由は?

Q7. 急性期病院に関する病院機能評価の審査項目に、「医師が32時間連続勤務を
 する場合、患者・家族にそのことを公開する」という規定を追加べきとは
 考えませんか?

Q8. 急性期病院に関する病院機能評価の審査項目に、「医師は24時間勤務をした翌朝に
 危険をともなう手術や検査をしない」という当然のことがない理由は?

Q9. 急性期病院に関する病院機能評価の審査項目に、「医師が24時間勤務をした翌朝に
 危険をともなう手術や検査をする」場合は患者・家族の「同意書」を
 必要とするという規定を追加するべきとは考えませんか?

Q10. 病院機能評価の項目に「労働基準法の遵守」が欠如している理由は?

Q11. 病院機能評価において「女性医師の育児支援」に関連する項目がまったくない
 理由は? (単に失念?)

貴機構のホームページにはこのようにあります。

/** 引用開始 **/
1. 医療機関が自らの位置づけを客観的に把握でき、改善すべき目標もより具体的・現実的なものとなります。
2. 医療機能について、幅広い視点から、また蓄積された情報を踏まえて、具体的な改善方策の相談・助言を受けることができます。
3. 地域住民、患者、就職を希望する人材、連携しようとする他の医療機関への提供情報の内容が保証されます。
4. 職員の自覚と意欲の一層の向上が図られるとともに、経営の効率化が推進されます。
5. 患者が安心して受診できる医療機関を増やすことになり、地域における医療の信頼性を高めることができます。
/** 引用終了 **/

Q12. 『医療機関が自らの位置づけを客観的に把握できる』と表明する根拠は何
  ですか?

Q13. 病院機能評価に「合格」することにより、当該病院の『職員の自覚と意欲の
  一層の向上が図られる』という根拠を示す事ができますか?

Q14. 病院機能評価に「合格」することにより、当該病院が『患者が安心して受診
 できる医療機関』になるという根拠を示す事ができますか?

Q15. 病院機能評価の受審がカタチだけに終わっているか否かの評価をしないのは
  何故ですか?

Q16. 病院機能評価の version 4 に認定された病院の大多数が、カタチだけに
 終わって「いない」根拠が皆無なのに、version 4 の「更新」つまり version
 4 が「実際に守られている」ことの確認という形での更新を排除するのは
 何故ですか?

Q17. 病院機能評価の version 4 に認定された病院の大多数が、カタチだけに
 終わって「いない」根拠が皆無なのに、更に複雑化・非現実化した version 5
 でしか「更新」を認めないのは何故ですか?

Q18. 病院機能評価の受審と認定に伴い、病院における医療専門職の間接業務が
  増大し、結果として医療の質・安全が低下している可能性を否定しますか?

おわりに

 私は日本医療機能評価機構を全否定するには到っておりません。貴機構が
生まれた契機は厚労省と医師会等の単なるアリバイ作りだと思います。日本の
医療政策の問題点を全く考慮することなく、すなわち、現実の病院における
人手の不足と収入の不足を無視して、貴機構は実現ができるはずないとわかっ
ていながら、審査項目をどんどん複雑化・非現実化してきました。心情は
理解できなくはありませんが、そろそろ現実を直視していい時期だと思います。
既に受審する病院数は減少傾向になっています。貴機構は受審の減少に
対応して審査期間の短縮化やらで対応しようとしてますが、そのような
ことはますます審査が「カタチだけ」ということを露呈する行為です。
 貴機構の名前と「天下り」の2語をキーワードとして google あたりで
検索してみて下さい。10万件以上がヒットします。医師のブログを貴
機構名で検索してみると、良い評判など1つもみつかりませんでした。
悪評だらけであります。
 医師の絶対的不足、看護師の絶対的不足、介護職の絶対的不足、ヘルパーさん
らの絶対的不足という純然たる現実、および診療報酬の抑制という中央政府
政策がある中で、カタチだけの書類と委員会を増やす病院機能評価の受審は
(例外はあるでしょうが)医療の質を低下する作用こそあれ、質の向上には
結び付かないと私は結論しました。

 反証できますか?

 日本医療機能評価機構は公的な使命を有する組織だと私は信じます。
私は実名で語っております。真摯な回答を求めるものです。

以上、日本医療機能評価機構(mail: info@jcqhc.or.jp) に 2007年4月25日に
メールを送りました。このメールの全文は、http://d.hatena.ne.jp/sawataishi/
に公開しました。回答はもちろん私ができる限りの手段で公開いたします。